畜産の話題

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ここでは、畜産振興に努める町内の畜産農家の話題等を提供します。

平成30年度鹿児島県畜産共進会において肝付町産牛が若雌2区で1席2席を独占しました。 New!

2018年10月12日
 平成30年9月29日に姶良中央家畜市場において平成30年度第67回鹿児島県畜産共進会が開催されました。肝付町からも肝属郡代表として若雌2区に鳥丸美知也さん(鳥越振興会)の「やすはな」号と米澤茂穂さん(水窪振興会)の「ひなりせ」号の2頭が出品され、見事1席を鳥丸さんの「やすはな」号、2席を米澤さんの「ひなりせ」号が獲得しました。この2頭は生まれも育ちも肝付町産の若雌で、同一町での1席2席独占は大変な快挙です。今回は、この2頭のこれまでの軌跡をお伝えします。

【「やすはな」号の軌跡】
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 鳥丸さんは「やすこ2の2」号という、体が大きくお尻の形の綺麗な母牛を飼養されています。この「やすこ2の2」号から生まれる子牛は大変発育が良く、これまで生まれた子牛は、去勢牛は1カ月早出し、雌牛は3頭、肝属郡の保留牛に輝いています。
   この「やすこ2の2」号が平成29年3月7日に、母牛に似てお尻の形の綺麗な雌牛を出産しました。この子牛は父牛が鹿児島県を代表する名牛「華春福」号であったため、父牛と母牛の名を取って「やすはな」号と名づけられました。「やすはな」号はすくすくと成長し、通常は平成29年12月の子牛セリ市出場ですが、11月の子牛セリ市に早出し出荷となりました。セリ市当日の朝には子牛の品評会が開催されます。鳥丸さんは「この『やすはな』号は、これまで飼養した牛の中でもぴかいちだ。この子牛が肝属郡の保留牛に入らないはずはない。」と自信をもって子牛品評会に参加され、見事、肝属郡の保留牛にまずは輝き、自家保留されました。
   鳥丸美知也さんは在職中は農協の畜産技術員として福山町や吾平町で長年活躍され、現在は故郷の肝付町で母牛を36頭を飼養されています。畜産技術員時代には担当地区の牛を県畜産共進会へ出品していましたが、いつかは自分の牛を県畜産共進会に出品したいということが夢だったそうです。「『やすはな』号は、その夢をかなえることができるかもしれない。」と思い、ここから鳥丸さんの挑戦が始まりました。
 「やすはな」号は子牛の時点では、発育が良く、背中の幅、お尻の幅と形がすばらしいものがありました。欠点としては、肩が少し出ており、毛色が少し赤いところがありました。そこで鳥丸さんは、その改善のために餌箱を高くし、前足を踏ん張るように床を少し前足のところだけ高くしました。また、毛色の改善のために飼料添加剤を給与しました。
これらの取組みを続け、立ち方の練習や刷毛がけによるマッサージなどを行いながら、育成を行った結果、肝付町の代表牛として肝属郡春季畜産共進会に出品され、見事グランドチャンピオン賞を受賞されました。講評では「体積にすぐれた理想的な牛」と評され、最高の評価を得ることができました。
   ここから県畜産共進会までは4カ月あります。牛は種付けが終わるとお産の準備に入り、成長とともに体に子育てのための栄養を蓄えだします。また、おなかの中の子が大きくなることで、背中がだんだんと下がってしまいます。また、牛には月齢に応じた体の高さの上限値と栄養状態の基準値があります。母牛の「やすこ2の2」号が体の高さが上限値を超えているため「やすはな」号の体の高さが出すぎないようにしなければいけない。背中のまっすぐな線は維持しなければならない。栄養状態は維持しなければならない。
   運動をすれば栄養状態の維持は出来ますが、体の皮膚のゆとりがなくなったり、体の高さが出すぎたりする恐れもあります。そこで鳥丸さんは、この牛の魅力を最大限発揮するために、繋牧とマッサージと刷毛かげで牛を作り上げることにされ、懸命に努力されました。
その結果、またも肝付町の代表牛として肝属郡秋季畜産共進会に出品され、グランドチャンピオン賞春秋連覇という快挙を成し遂げられました。諸先輩方にお伺いしてもグランドチャンピオン賞春秋連覇は聞いたことがないとのことでした。それだけ牛の成長に伴う管理の対応による状態の維持は難しいのです。また、「やすはな」号はもっとも雌らしい品位に満ちた牛に贈られる「種牛性賞」と、もっともすばらしい体の前の部分の幅と深みに優れた牛に贈られる「前躯賞」も受賞しました。
   ここから県畜産共進会までは19日間あります。牛は2週間で、また状態が変わってしまいます。鳥丸さんは細心の注意を払われ、栄養状態や牛の立ち方の練習等を行われました。特に皮膚が敏感であることも判明したため技術員の方々の協力の元、早朝に毎日湯拭き等を行い、毛並みを整えました。また朝早いうちから栄養度を自分の目で確認し、マッサージや刷毛かけをしながら調整を続けられました。
   こうした努力の結果、ついに夢を実現し、県畜産共進会に出品され、若雌2区1席を受賞されました。また、県畜産共進会においても「種牛性賞」を受賞され、「やすはな」号は県で一番の雌牛らしい品位のある牛となりました。
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   鳥丸さんにお伺いすると「牛を飼い始めて13年で念願の鹿児島県畜産共進会に初出品することが出来ました。私は多頭農家ですので、春は粗飼料の作付け、秋は粗飼料の収穫と共進会の時期と重なる作業があり、大変忙しかったですが、チームきもつきの一員として責任を全うするために頑張ることが出来ました。途中では心配で胃が痛くなる思いもしました。牛飼いは大変なことが多いですが、県畜産共進会で1席を獲得することができ大変うれしく思います。『やすはな』号は登録検査が控えていますので、次は肝付町の最高点数を目指して頑張っています。
   来年は家族会をしている外園孝男さん(岩崎振興会)、園田幸治さん(岩屋振興会)と一緒に父系群を作れたらと語り合っています。園田さんは大変良い餌箱を持たれていて、園田さんが春の郡の共進会に出品される時に使われているのを見て一目ぼれをし、県畜産共進会には、その餌箱も貸していただきました。次はこの3人で何かいい思い出が作れたらいいなと思っています。
   また、自宅にも妻の実家から購入した母牛の系統から生まれた「ゆきはな」号という牛がいますので、次の共進会への出品を目指して頑張ります。」とのことでした。


【「ひなりせ」号の軌跡】
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 「ひなりせ」号は米澤茂穂さんの友人の久保敏弘さん(大平見振興会)の牛舎で平成29年3月19日に生まれました。生まれも大きく、背中が綺麗で、将来性を感じた久保さんが「後々自家保留するかもしれない。」と思い、久保さんの娘さん2人の名前から「ひなりせ」号と名づけたそうです。
 友人の米澤さんは久保さんの牛舎を訪問した際、「ひなりせ」号を一目見て気に入り、「この牛は久保さんが自家保留しないのであれば、自分が購入する。」と決めていたそうです。
   米澤さんは昨年別の友人の外園龍一さん(東串良町)が全国畜産共進会に出品された際に、昼夜問わずの協力を行い、共進会への取り組みを体感されていました。
   また、今年は安室奈美恵さんの引退の年であり、安室奈美恵ファンでもある米澤さんは「安室奈美恵さんの引退の年に自分も何か思い出を作りたい。自分の思った牛で外園さんから学んだ取り組みを生かして、共進会をしてみようかな。」と思っていたそうです。その思いの中で「ひなりせ」号に出会った米澤さんは、12月子牛セリ市にて久保さんより購入されました。
   「ひなりせ」号は体の形は大変すばらしいものがあったのですが、春の肝付町の共進会では毛色の問題があり、町の代表牛になることはできませんでした。
   そこで米澤さんは「毛色を改善して夏には周囲を驚かせてやる。」との思いで、赤い毛を刈り込み、飼料添加剤の利用と牛のシャンプーでの洗いを徹底し、毛色の改善を図りました。
   それらの努力の成果で夏の町の共進会に出品された「ひなりせ」号は毛色が改善され、立派な牛になっていました。若雌3部での比較審査では鳥丸さんの「やすはな」号と審査員の中でも評価が分かれる接戦でした。
   その後、「喜亀忠」号の父系群の町代表牛として肝属郡秋季畜産共進会に出品された「ひなりせ」号は父系群として見事最優秀賞3席に輝きました。その後、県畜産共進会出品牛選定において父系群の中から肝属郡代表牛として若雌2区に見事選出されました。また、肝付町削蹄師会会長でもある米澤さんの「ひなりせ」号はもっとも脚の優れた牛に贈られる「肢蹄賞」も受賞しました。
   肝属郡の代表として選出された「ひなりせ」号の課題は栄養度でした。「ひなりせ」号の美しい品位を作るために米澤さんは高品質な粗飼料を給与していたのですが、審査員が触れる部位に脂が付きすぎていると判定されたのです。そこで米澤さんは運動を取り入れることにし、外園さんの田んぼを借りて牛の運動をしました。全国の安室奈美恵さんファンのSNSを通じた友人の方たちからも「米澤さんの牛は安室ちゃんのように綺麗になりましたか?頑張ってください。」との声援が届きました。
   これらの声援を胸に運動や牛の洗いを頑張った結果、遂に米澤さんは鹿児島県畜産共進会に初出品し、若雌2区最優秀賞2席という素晴らしい成績を得ることが出来ました。
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   米澤さんにお伺いすると「この牛は一目見た時から気に入り、友人から譲り受けた牛でした。途中は色々なことがありましたが、自分が思った以上の牛になってくれて外園さんから渡されたバトンを無事受け取ることができたと思います。このバトンを今度は久保さんに渡して友人同士で協力しあって、また共進会に挑戦してみたいです。安室奈美恵さんの引退の年に最高の思い出が出来ました。」とのことでした。


   肝付町で生まれ、肝付町で育った牛が鹿児島県畜産共進会において1席2席を独占することは奇跡に近いことだと思います。出品者の皆さん大変お疲れ様でした。県畜産共進会で鳥丸さんと米澤さんの牛が連続で呼ばれた時には大変な感動に包まれました。これからも良い牛づくりを目指して牛飼いを頑張ってください。